【おれとお前のラブゲーム】1・作者取材のために休載します、は悪い予兆

おれとお前のラブゲーム

 

「ほい、ジャンプ」
「さんきゅー」

 

いつものように午後の授業をさぼって、バカ話をしていたおれとケンジ。左手にいちご牛乳、右手にジャンプ。このひとときが、世界はなんて平和なんだとしみじみ感じる瞬間だった。

 

「……うおっ! 今週のワンビーズ、作者取材のため休みだって。どこ取材しにいってんだろーな」

 

いや、この日はいつも通りではなかった。おれが楽しみにしているワンビーズがめずらしく休みだったんだ。何かの予兆みたいに。

 

「ああ、それな、うそなんだよ。締め切りに間に合わなかったからそう書いてあるだけなんだ」
「ほえー、まじ?」
「大人の事情ってやつだ。それよりあゆむ、ちょっと寝転がってみろよ。気持ちいいぞ」

 

昼下がりの午後、太陽は空高く浮かんでいて春らしくポカポカと温かかった。こんな日はワンビーズが休載だろうがなんだろうが、どうでもよくなってくる。言われるがまま仰向けになった芝生の上は意外とふかふかしていて寝心地抜群……。

 

 

ピヨピヨ

 

 

「……おい、何してんだ」

目を開けるとなぜかおれはケンジに両肩捕まれていた。太陽の代わりに、奴の憎らしいくらい整ったツラが浮かんでいる。

「なあ、あゆむ」
「なんじゃい」
「あゆむ」
「だ・か・ら、なんだっつっ……」
「オレの彼女になって」

 

 

沈黙

 

 

「んー? 最近耳掃除してねーせいか、よく聞こえなかったんだけど……」
「耳掃除ならオレがしてやるよ。それとも舐めてやろうか」
「……ケンジ」
「なんだい?」

 

 

おれたちはにっこりと微笑みあった。
そして、キンテキ。

 

 

チーン

 

 

「あゆむ! 痛えんだけど!」
「あ、夢から覚めた? なら、そろそろこの手、どかしてくんねーかな? 妙に力入って、おれもいてーんだけど。むぎぎぎ……」
「好きだよ」

いやいや、ケンジ? お前は確かにイケメンだ、色男なのは認める。こうして女を落とすための練習を夢の中でも欠かさないのもわかる。けどな、しつこいのはいくらおれでもうんざりだぞ。もう一発キンテキ食らわしたろか。

 

 

「大好き」

 

すぽーん

 

「おいおいー、それくらいにしとけよ! あゆむ、目が点になってんじゃんか」
「ヘイヘーイ、あっついねーお二方! ひゅーひゅー!」
「サブロウ、やめろって! あゆむが可哀想だろ」
「いでっ、この乱暴者」

おれの脳味噌のキャパが超えたとき、陰からヤンキー仲間のてっぺいとサブロウがやってきた。おれはそのまま押さえ込まれたままの体制で、てっぺいたちに問いかける。

「ど、どゆこと?」
「あゆむちん。きみも隅におけないねーチェケラッチョ」
「サブロウには聞いてねえ! てっぺい、どゆことだ」
「あのねー、おれらも色々止めようとはしたんだけど……ケンジはあゆむのことが好きみたいなんだよ」

てっぺいがため息つきながら簡潔に説明してくれた。
ケンジがおれのことを好きらしい? いや、それ、もう聞いたんすけど。

「まじで?」
「みたい」
「まじか。それはどういう解釈で受け止めればいいんだ」

おれはケンジに向き直る。その潤んだ目、やめてくれ。

 

 

 

ぶちゅうううう

 

 

「やった……」
「見ちゃった……」
「ほんとのおホモだちになっちまった……チェケラ」
「ごっそさん」
「うぎゃああああ、てめっ、何しやがる!」
「わかりやすく」
「おれのっ、おれの唇っ、つーか、舌入れやがった!」
「おう。とても柔らかかった」

 

 

げしっ

 

 

「男なら、ヤンキーなら、ぐだぐだ悩むなよ。顔良し、頭良し、ケンカ強し、H上手し。一体オレのどこが不満なんだ」
「性別だよ!」
「ほら、ちょうど男子校だし、郷に入れば郷に従えって言うだろ?」
「従えるか! じゃあ何でおれなんだよ! てっぺいでもサブロウでもいいだろが!」
「……あゆむ、事態はそんな単純じゃないんだよ。オレ、モテモテじゃん? 男も女も落とし飽きたしヤり飽きたじゃん? んで、お前だったらなかなか落とせないしヤらせてくれないと思うんだよね。お前なら強いし、面白いし、可愛いし……えーとまだ何かあったかな」
「おれ、お前の友達やめていいか……?」

 

 

そして、この日からケンジとおれの攻防戦が始まった。

 

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました