【おれとお前のラブゲーム】3・勉強ができないおれの将来の夢はボディガードになることです

おれとお前のラブゲーム

「あゆむ、悪かったなこないだは……それにしても何でそんなに離れてるんだ」
「……」

 

塀 おれ――4M――ケンジ 塀

 

ケンジはいつも通り涼しい顔をして、こないだのことなんか何でもなかったように振る舞う。やっぱ冗談だったんだ。こいつはな、こう見えて冗談やお笑い好きなやつなんだよ。M1グランプリがあるときは、7時前に夕飯も風呂もすませて、ビールとポテチを前にスタンバっているようなやつなんだ。

「ケンジ、その話は置いておいて、今日はF高のやつらとメンタン(ガンタレ)勝負があること、忘れてねーだろーな」
「ああ、そうだったな。何人くらいで来るんだ?」
「5人くらいだよ」
「なーなーオレ、そんなことよりカラオケ行きたいなー。キスをすーるたあびいにいーめをとじてるうのはあー♪」
「サブロウ! メンタン勝負のことだけを考えろ!」

中学の頃からヤンキー街道まっしぐらだったおれは、勝負ごとに命をかけている。当然勉強は苦手だ。ついでに言うとカラオケも苦手だ。ケンカさえ強ければ、世の中なんとかなるもんなのだ。

「いや、ならねえだろ。メンタン勝負より大事なもんがあるぞ」

ケンジが今日返ってきたテストの答案をぴらぴらさせながら言う。バツばっかだ。いつもにくたらしいことに学年トップなのに、今回は調子が悪かったのだろうか。今までにない真剣な顔でその答案を見て「こりゃだめだわ」とか「考えられないね」とか「死んだ方がマシ」など、呆れ顔でため息をついていた。かなり悪かったと見える。

そんなおれの心配そうな顔に気付いたのか、ケンジが真顔で向き直り問いかけてきた。

「あゆむ、そういえばお前は何になるの」
「んー、ぼ、ボディガード?」

ケンジは密やかに吹き出した。何が面白いんじゃ、コラ。少し本気だぞ。

「でも安心してくれ。オレはお前のそんなところも好きなんだ。ウィークポイントを逆説すると、チャームポイントにとれないこともない……」
「ぐわあっ、この答案おれのじゃねーか! どうしてお前が持ってんだ!」
「神様のいたずらだ」
「どう考えてもお前のいたずらじゃ!」

おれの答案見て、さっき何て言ってやがった……。

ケンジとは中学からのつき合いだ。性格は真逆なのに、なぜか馬があったおれたちは一緒の高校に進んだ。しかし、おれのレベルに合わせて進学したケンジは、この学校でトップクラスの成績を誇っている。

ヤンキーなのに成績いいってどういうことだ。ヤンキー論としては、勉強しないのがかっこいいのであって、授業ふけたりするのがいかしてるというか……。

「勉強してないし、授業もお前と一緒にさぼってばっかだろうが。オレはもともと頭がいいんだよ」
「あゆむはバカだもんなー。殴られすぎなんじゃない?」
「このご時世、大学出てたって就職難の時代なのに」

な、なんだよ。人を不安にさせるようなことばっか言いやがって。てっぺいとサブロウまで、そんな神妙な顔になるな。なんだか胃が痛くなってきた。

「今日のF校との勝負は前園たちにまかせて、オレと追試の勉強した方がいいんじゃないのか?」
「なっ、何でそんなことに! お前、うまく話持っていったな!」
「ああ、あのとき勉強しておけばって、後悔しても知らないぜ。のぞむさんも不良だろ? 兄弟揃って路頭に迷っちゃ、親も悲しむだろうな」

まあ、確かにのぞむ(兄)もおれと同じくらいアホだけれども。ちなみにおれよりレベル低い高校で留年してます。のぞむの夢はボクサーです。ボクシングなんてやったことないけど。

「家庭教師雇うにも塾に行くにも安くないんだよ。バカが1人で勉強しても、結局バカなんだからわかんないことだらけで勉強したことにならないんだよ。それに対して学年トップのこのオレが学年最下位のバカに無償で教えてやるって言っているのに、それがわからないくらいお前はバカなわけ?」
「バカバカ言うな! それでもお前、おれのこと好きだって言えるのかよ!」
「好きだよ?」

 

 

はっ、なに自分からぶり返してんの?

 

「好きに決まってんじゃん。オレ、Sなんだぜ。好きな子には意地悪しちゃうわけ」
「ち、近いって……」
「でも本当冗談抜きで、このままいけば留年だな。お前は高校2年をやり直す。1年のときもギリギリだっただろ。オレがみっちり勉強教えてやって、やっと上がれたんじゃなかったっけ? ダブリって、あんまかっこよくねえよ。アホがいきがってる感じで」
「うっ」
「あ、でもそれもいいかもな……お前はオレたちのこと先輩って呼ぶんだぞ? ヤンキーっつーもんは主従関係に厳しいからな」

 

ぽやややーん(妄想中)

 

「絶対やだ!」
「それにしても、この答案見れたもんじゃないな。マソコデラックス並の巨漢デブがノーカット修正版で惜しみなく裸を披露してるエロ本といい勝負……」
「そんなもんと勝負させんな! おれはさ、数字を見てると頭が痛くなってくるんだ。アルファベットもな。けして頭が悪いわけじゃねえ!」
「小学生もまっつあおの言い訳だな。じゃあ、今度の追試で平均点以上とれるって言うんだな?」
「へっ、おれが本気出せばちょちょいのちょいよ」

流れで調子いいこと言ってしまったが、ケンジのにやりと笑う顔を見て、あ、やばいと後悔した。が、遅かった。こいつはとことん相手の弱いところをついてくる腹黒い人間なのだ。

「本当だな? 男に二言はないよな」
「あ、あたりきよ」
「じゃあ、もし平均点以下だったら、オレとにゃんにゃんするんだぞ」
「なっ、なんだよそれ! しかもにゃんにゃんってなんだ!」
「自信ないのか。嘘つき」
「ち、違いますうー」
「なら平気なはずじゃん」
「最近、頭痛がして調子が悪いんですうー」

 

 

てなやりとりをすること、十数回……。

 

「さ、頭痛薬用意しといたぞ」
「……」

 

 

【状況】
窓 ベッド おれ 机 ケンジ 扉

 

 

「ちゃんと教えてくれるんだろうな!」
「はいはい、何でそんなに偉そうなの。客に茶くらい出せよ」
「へいへい、おじいちゃんはお茶ね。おれはコーラ飲むけどね」
「ビール。あと、風呂沸かしといて」
「おれは新妻じゃねえぞ! てか、人ん家で風呂入ってくバカどこにいんだ!」

 

結局教えてもらうことになっちまいました。

 

 

 

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