【おれとお前のラブゲーム】4・ギニュー特選隊のくだりはあまり意味がありません

おれとお前のラブゲーム

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4・ギニュー特選隊のくだりはあまり意味がありません

 

「それにしても、お前の部屋久々だな。あゆむのにおいがする。お前に包まれてる感覚に陥るぜ」

 

聞こえない、おれは石になる。どんな嫌がらせを仕掛けてくるんだ、こんにゃろう。
おれがじっとファイティングポーズをしていると、何だそれは、とでもいうようにケンジが顎をくいっと上げた。

 

「ほら、早く準備しろよ」
「えっ」
「時間ないぞ」
「あ、はいはい」

 

ほんとにまじめに教える気あんのか、こいつは。
おれは苦手な数学と化学と英語の教科書を机の上に並べた。ほとんど使っていないので、折り目も書き込みも、手垢すらついていないピカピカの新品同様だ。

 

「どこが分からないんだ?」
「全部」
「きたよ。とりあえず、この問題やってみ?」
「えーとお……」

 

現在完了とか、わけわからん。なんで現在なのに完了してんの。英語はこれだから、日本人の頭では考えられんもんがぽんぽん出てきやがる。

 

「進んでないぞ」
「だって分かんないんだもん」
「ちゃんと考えたの? ここ、ケアレスミス。butがbatになってる」
「あ、ほんとだ」
「はは、汚い字」
「う、うるせ」

 

そしてケンジはどういうときに使うのか、どんな単語を使わなくてはいけないのかなど、分かりやすく解説してくれた。
ちゃんと教えてくれるんだ。結構いいとこあんじゃん。まあ、もともといい奴なんだけどさ。そうじゃなかったら友達やってねーしさ。

おれが問題を解いている間、ケンジはおれの部屋にあるドラゴンボールを読んでいた。マンガを読むために伏し目がちになった顔を盗み見すると、くっきりとした二重の線が見え、その下では長いまつげが陰を作っていた。

マンガに夢中なようなので引き続き、筋の通った鼻とか、つんと尖った唇とか、斜めに分けられた茶髪とか、一問解く度にケンジへと目をやる。
やばい、こうして見ると、どこから見てもかっこいい? んじゃないか? これだったら男でも惚れるの納得……男でもって、あ、おれ男でしたっけ……? いやいや、そんなことは……。

 

「あゆむ」
「ホ、ホワーーーッツ?」

 

びっくりしたあ。いきなりこっち向くんじゃねーよ。でも、今まで見つめていたことは気づかれていないようだ。ギリギリセーフ。

 

「ギニュー特戦隊の名前全員言ってみ」
「えーと、リクーム、バータ、グルト、ジース……あれ? 5人だったよな……あと誰だっけ」
「ギニューだよ」
「あ、なーんだ」
「あゆむは、忘れちゃいけないもんを忘れるよな」

 

ケンジはドヤ顔をしてから読んでいたドラゴンボールを棚へ戻しに行った。確かに、ギニュー特戦隊でギニューを忘れるなんて……でもまあ、ギニューはボスだし特別な存在というか。それにしても、何でいきなしそんなクイズ出したんだ?

 

 

「な、さっきさ、オレのこと見てた?」

 

 

はうっ! いつの間に隣に!

 

「結構見てたよな。5回くらい」

 

こいつ、気づかない振りしてやがったな! おれの顔にどんどん熱が上がっていくのがわかった。はい、見てました、なんて言えるはずもなく、もちろん全力否定だ。

 

「み、見てねーよ! 見るかよ、お前みてーな変なツラ!」
「あゆむ、すげえ顔真っ赤」
「ず、頭痛が悪化して熱がでてきたんだよ!」
「じゃあ寝てないといけないな」
「うおっ」

 

ケンジは簡単におれを抱え上げると、ベッドに転がした。ふかふかのマットレスで少し弾んで体制が崩れる。そこへ逃げ場をなくすように、ケンジが仰向けに押さえ込んできた。

 

「なななななにすんだっ」
「嫌ならはねのけていいんだけどさ……」
「イヤに決まってんだろっ、どけよ!」
「力はオレの方があるみたい」
「おめーの方がでかいからだろっ」
「オレの唇の位置、お前のデコだもんな」

 

 

ちゅ

 

 

「ふおおおお……」
「あゆむの髪の毛やらかいね。伸ばしても可愛いと思うんだけど、お前ずっとベリーショートだよな、小猿みたい」

 

くそ……腕も足もガードされて、これぞほんとの手も足も出ない状態。
人をペットみたいに撫でくりまわすな!

 

「オレさ、お前のこと好きなの」
「そそそそそれがどーした!」
「だから、やりたいことって、ひとつじゃん?」

 

ケンジの唇がおれの唇に触れた。緊張をほぐすかのように何度も何度も繰り返す口づけは、軽やかな音を立て、触れては離れる。強張った口元はいつのまにか緩んでいて、不思議と心も静まっていた。

知らない間にベルトを緩められて、ズボンも下ろされていた。気づいて慌てたときにはもう、ケンジの顔がおれの股間に埋まってた。

 

「んっ……ケンジっ、やめ……」

 

抗うけど快感には勝てず。羞恥心に目をつぶって、ケンジの髪の毛をくしゃりとつかむだけだった。

 

「あゆむの味、無味無臭」
「しらねーーーーーよっ!」
「でも、今までで一番うまい」
「んんっ……やめ……。で、出るから、出るから!」

 

渾身の力で跳ねのけると、おれは半ケツのままティッシュの方へ駆け出した。すぐさまティッシュを手にした次には零れる寸前だった。あいつの前で射精なんかしたら、羞恥心で1週間学校を休んでしまいそうだ。
無事出し尽くして大きく溜め息をついた。下がったパンツとズボンを履き直し、ベッドに乗ったままのケンジを睨むと、奴は脳天気な顔で笑った。

 

「オナニーよか気持ちよくない?」
「……」

 

言葉が出ない。目頭も熱い。顔も体も、なにもかも。
おれは、ただただ呼吸を整えることしかできなかった。

 

 

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