おれとお前のラブゲーム
6・もっこりひょうたん島、いや、ひょっこりひょうたん島
「ちょ、ちょっと待てよ。ここ、人があんま通らないとはいえ、外だぜ? 誰かに見られたらどうすんだよ!」
「オレたちは何も困ることはないぜ。困るのはお前だけだ」
そう言って手が伸びてきて、無理矢理ズボンとワイシャツをはぎ取られる。トランクス一丁になったおれは、絶対にこれだけは死守しようと、パンツを脱がされないように背を丸めた。
「冗談やめろよっ、正々堂々とタイマンで勝負しようぜ!」
「勝負はついたよ。お前がフルチンで土下座しないのがいけないんじゃねえか」
「誰がするか! そんな恥ずかしいこと!」
「ほら、なんか怪しいんだよ。男ならフルチンくらいどうってことねえぞ。なんで恥ずかしがる必要あんの? それとも、サイズがちっちゃいとか? 剥けてねえとか?」
「もううっ、さわんなっ」
必死に身をよじるが、奴らは全員でおれを押さえ込んだ。
「お前、めっちゃ色白くね? 乳首とかさ、その辺の遊んでる女よか良い色してんじゃん。ちょっとさわらして」
「ちょ、ちょっとちょっと……! ひあっ」
「ははは」
「やべえ、おもしれえ、こいつ」
「笑ってんじゃねーよ! さっさとやめろ、この変態!」
びりっとした刺激が乳首に走り、涙がにじんできたのを必死で我慢する。なんでおれってば乳首つままれたり、ちんこ舐められたりしなきゃいけないの? 男のなかの男ってどうやったらなれるの?
「オレ、お前のこと気に入ったよ。ちょっと大人しくしてな」
な、なんか顔がいやらしいんですけど。なんか、ズボンおろしてんですけど。なんか、ブリーフがもっこりしてんですけど。そういえば、もっこりひょうたん島ってアニメがなかったっけ。いや、ひょっこりひょうたん島か……。
あ、ひょっこり……。
「ぐああ! ちんこ、ひょっこりさせてんじゃねーよ!」
「大人しくしろって……はあはあ……」
奴はおれの前で、おれの二倍はあるモノをしごきだした。そのでけえモノ、どこに突っ込む気だよ! なんでこいつら、こんなに冷静なの? 男が男に欲情するって、この世では当たり前のことなの? おれが間違ってるの? ねえ、教えて?
衝撃で言葉もなく、モノが育っていくのを見ていると、おれの手を押さえているうちの一人が安心させるように言った。
「安心しろ。一雄さんはホモなんだ」
どこに安心要素があるんだよ! むしろ危機感が募ってくるに決まってんじゃねーか! ほら、なんか慣れた手つきでコンドーム取り出したし、ピストン運動しだしたし!
「大人しくしてれば気持ちよくしてやるよ。でも、もし騒いだりしたら、内側の粘膜ビリビリにするまで突いてやっからな」
「ひ、ひえー!」
こいつ、目がイっちまってる。他の奴らも面白そうに見てる。やべえ、体育倉庫のワンシーンが浮かんできた。た、助けて!
「土下座する! 土下座するから助けてくれ!」
「もう遅えんだよ。この始末、つけてもらおうか」
そいつは、くいくいっと腰をくねらせてきた。
うおお! 震えてる!
例えるならなまこ!
沖縄旅行で初めて見た、あのなまこ!
気持ち悪いよおー! こんなん突っ込まれたら肛門破裂して、トイレ行けなくなっちゃうよおー!
「オレのブツは、なまこ並にアグレッシブなんだぜ」
以心伝心! 嬉しくねーよ!
「お前のもやってやるよ」
「……んっ」
トランクスの隙間から手を突っ込まれて、とたん甘い声が漏れた。一瞬の空白ののち、奴の手はそのままおれのモノに留まり、唇では淫猥な音を立てながら胸の突起を吸う。
「あっ、やめ、ろ……ば、か……」
「もう感じてんのか、この変態」
「やあ……ん……」
自分でもありえないくらいエロい声が出てきた。おれ、変態なの? いやん、ばかん、とか言っちゃうの? おれ、あいつらの仲間入りしちゃうの?
「やだよ……ケンジ……」
「なんだよ、この後に及んであいつの名前かよ。あいつは来ねえよ。オレがじっくり楽しませてやるからよ」
「いやだあ! ケンジ、助けてえー」
「だから、来ねえって……ぶへえ!」
いきなり、そいつは横っ飛びに吹っ飛んで、同時に周りの奴らも次々と倒れていった。
見上げると、ケンジが背後に突っ立っていた。
「ケンジ!」
「そこまでだ。あゆむ、帰ろう」
「ど、どうなってんの……?」
潤んだ瞳で見上げると、ケンジは唇を重ねてきた。奥へ奥へと舌を延ばして、呼吸が続くギリギリまで舌を絡ませる。苦しくなると色っぽい吐息を吐いて、また繰り返す。
その口づけが顎へ、首筋へ、そして胸へと落ちてきたので、体の自由がきかなくなった。ケンジはおれの性感帯を探り当てるのがうまく、触れられるたびに体が麻痺してしまうんだ。
「あいつらに何されたの? ここ、こんなに赤くなってる……」
「あ、ケンジ、おれ、ヤられちゃうとこだったんだ……」
「そんで、何て思った……?」
「いやだって、思った……」
本当は、こいつとヤるくらいなら、ケンジにおれのバックバージンあげときゃよかったなんて、そんなアホなこと考えてた。
そんなおれの思考を見透かしたように、ケンジは真剣な顔で見つめた。
「オレ、お前のこと、二度とこんな目に合わせねえから、オレのもんになってくれる……?」
おれは返事なんてできなかったけど、ケンジは散らばった服を着せてくれて「行こう」と手を差し出した。
優しく手を差し伸べられて、おれは一瞬固まった後、その手をつかんだ。おれは安心したのか、なぜが涙腺が緩んで胸が苦しくなった。泣きたい衝動を抑えながら、顔を伏せて憎まれ口をたたくことしかできない。
「おせーんだよ……おれのこと好きなら、もっと早く来い……バカ……」
ケンジはおれを抱き包むと「ごめん」と笑った。ケンジのやさしさが、今は嬉しい。おれ、こいつのこと誤解していたのかもしれない。ケンジはほんとに、おれのこと大事に思ってくれてるんだ。それなのにおれは……ごめんな、ケンジ……。
ケンジは変わらず優しく微笑みながら「ほんとごめんな。もっと前から着いてたんだけど」と言った。
「え? 前から?」
「実は30分位前から着いてたんだ」
「んん? なんだって?」
「でも、お前のフルチンで土下座する姿が見たくてな、あそこで待機してた」
「……」
ボカッ