See you tomorrow・前編

短編小説

放課後、クラスの片隅で少年同士が口付けを交わしていた。
何名かがそれを見つめ、はやし立てている。そして、更に深く深く喉奥まで届くように舌を絡ませる。
息もできないほどの口付けに、一際線が細く整った顔立ちをした少年が苦痛に満ちた表情を作っていた。その少年は、ようやく唇が離れた瞬間大きく呼吸をして、垂れた雫を手の甲で拭った。

 

「郁チャンはこうされるのが好きなんだよなー」
「そ、んな、こと……」
「いや、オレとしたときが一番気持ち良さそうだったよ」
「も一回する? 郁チャン」

 

上がった息を整えながら、郁(イク)と呼ばれた少年が唇を拭って精一杯の笑顔で答える。困ったような恥らっているような何とも言えない微笑みに、少年達はまた心の奥底にある欲望の焔を燃え上がらせた。
そして、その内の一人が痛烈に言い放つ。

 

「脱げよ、郁」
「え」

 

口を開いたのは樋口と呼ばれるリーダー格の少年だ。その言葉にその場の全員が固まった。しかし、郁以外はすぐに状況を受け入れ、良いアイディアだというように郁を淫猥なまなざしで犯す。

 

「大丈夫だからさ」
「で、でも……」
「何、ヤなの?」

 

少年達は郁が否定できないのを知っていて尋ねる。
彼らは同じグループ。そして学校生活はグループ行動だ。彼らから爪弾きにされたら、郁は一人になってしまう。郁はそれが怖かった。こうしてキスをされたり、卑猥な言葉を言われたりするよりも何倍も怖かったのだ。しかし、服を脱げと言われたのは今日が初めてだった。

 

「オレ達さ、お前がだーい好きなんだよ。でもお前はそうじゃないわけ? 拒むってことはさ」
「ち、ちが……」
「ならさ、みしてよ。お前の体」

 

かけられる言葉は優しい声色だが、その裏に押さえきれない激情が潜んでいた。瞳の奥にも欲望が滲んでいる。
郁は、誰かが制止してくれないか、脅えたように他の少年達を見回した。しかし、他の少年達も同じ視線で郁の事を弄っていたことに気付いた。
放課後の教室とはいえ、まだ教師は職員室にいる。
そんな状況を見られたら何て思われるだろう。彼らはそれが怖くないのか。

 

「せ、先生が来ちゃうよ」
「こねーよ。今まで来たことあったか? ましてや、こんな廊下の端っこの教室、来たら足音でわかるっての」
「そ、だから郁チャンは安心して脱げばいーよ」
「それとも脱がされるのが好きなのかな?」

 

「ははは、オヤジみてーな言葉」とみんな笑っている。
それを、郁は唇を噛み締めて耐えていた。こんな屈辱的な出来事にも、何も出来ない自分にうんざりする。郁は諦めてシャツのボタンを、極めて自然に外してゆく。本当は指先が震える。でも、何ともない振りをする。彼らはそんな嗜虐心をそそる郁の表情にも興奮するのだ。だからできるだけ平静を装って、体育の着替えと一緒なんだ、と言い聞かせる。

シャツのボタンを外し終え、Tシャツ姿になる。そのTシャツも脱ぎ終えると、少年達が唾を飲むのがわかった。郁の体は触り心地の良さそうな線を描き、白くまばゆかった。

 

「さ、もう着てもいいかな……寒いんだ」

 

自分の体に貼り付けられた視線を跳ね除け虚勢を張り、脱いだTシャツを強く握り締めた。
郁に脱げと命令した、リーダー格の樋口という少年がにやにやしながら口を開く。

 

「何言ってんの。下もだよ」
「む、無理だよ」
「だーいじょうぶだって。ほら、誰も来てないからさ」

 

そういう問題じゃない、と心の中で叫んだ。

 

「や……できない、よ」
「なら、オレが手伝ってやるよ」
「だ、だだ大丈夫っ、じ自分でできるっ……」

 

郁が、にじり寄ってくる樋口に身を震わせた瞬間――

 

ガラリ

 

その場にいた全員が振り向いた。

冷ややかな目で彼らを見つめるのは、クラスメイトの大賀だった。
大賀はその光景に何も言わず、つかつかと自分の席へ歩いていった。そして、机から数学の教科書を取り出すと持っていたカバンの中に入れた。
入るときと同じ様に、何も言わずに出て行こうとしたとき、樋口が口を開いた。

 

「ノーコメントかよ」
「……俺には関係ないだろ」

 

何も言わずとも、大賀の刺す様な視線には非難が込められている。
大賀はその冷たい目を、樋口だけではなく郁にも向けた。
何故だか、その瞳を見ていると郁は泣きたくなった。

 

 

大賀は普段あまりクラスメイトと関わることはなく、いつも一人でマンガを読みながら音楽を聴いていた。
側に立ちずさむ人影に気付いて、大賀はヘッドホンを外す。見上げると郁が立っていた。

 

「あ、あのっ、昨日は、ありがとう」
「……俺、何もしてないけど」
「そ、それでも、ありがとうっ」

 

大賀はそれに頷いて、もう用は終わっただろうとヘッドホンを付けようとした。しかし、郁はまだ動かなかった。口を少し開いて話しかけたそうにしていたので、郁の方を向いた。

 

「お、大賀くんは、一人が好きなの?」
「……まあね」
「すごいね」

 

郁はそれだけ言い残すと、樋口たちが固まっている窓際の席へ帰っていった。
遠くから「大賀と何話してたんだよ」という苛立った声が聞こえる。
大賀は、くだらない、と思って自分の世界に戻っていった。

 

 

大賀は確かに普段一人でいるが、話しかけられればちゃんと答えるし、ときには皮肉めいた冗談も飛び出す。何かの行事でグループを作らなければいけないときは、自分から人に声をかけるし、必要以上に人と関わらないというだけだった。ときどき携帯のバイブが鳴るので、クラス以外に友達がいるみたいだったし、それに本当に音楽を聴いているのが好きみたいだった。

 

郁はあの日から大賀を観察していた。
自分とは大違いだな、と落ち込む。
大賀くんと友達になれたら、おれも少し変われるかもしれないな、とも思った。

 

「郁チャーン。今日こそはさ、こないだの続きしよーぜ」
「な、なんっ……」
「とぼけんな。放課後、残れよ」
「あっ、あのっ、今日はちょっと、よ、用事が……」
「嘘つくなよ。それとも、オレらといるのが嫌なわけ? いいんだぜ、嫌々一緒にいなくても」
「そ、そんな、こと……」

 

何も言えない自分に、良いようにされてる自分に反吐が出る。でも、唇を噛み締めることしかできない。郁は大賀のことを思った。彼なら、何て言うんだろう。一人は怖い。一人は惨めだ。クラス全員から必要のない人間だと思われてる証拠だ。そんなの寂しすぎる。
滲んできた涙を俯いて隠す郁。目の前の樋口は、そんな郁の顎に指をかけて顔を上げさせる。

 

「何泣いてんの」
「な、泣いてないっ。こ、これは、ただ、あああの……」

 

そう言う郁の唇を自身ので塞ぐ。クラスメイトがいる教室内なのにも関わらず、突然の口付けに郁は冷や汗をかいていた。やっと樋口の唇が離れると、郁は慌てて叫ぶ。

 

「ひ、樋口くん、罰ゲームなんだよねっ、ひ、ひどいなー」

 

出来るだけ明るく笑顔を作って、廊下に飛び出す。
クラスメイトに変な風に思われたらどうしよう。樋口は明るく、頭もいいし、クラスに馴染めているからいいけど、ただでさえはみ出し者の自分はどうすればいいのか。
それに、男とキスするなんて嫌だ。本当は、もっと嫌悪感を露わにして、二度とこんなことするな、と罵ってやりたい。人の弱みにつけこむなんて最低だ、そう叫んでやりたい。
でもそんなことできない。郁は人知れず泣くしかなかった。
もうすぐ授業が始まる。休んでしまったら樋口にも、クラスメイトにも変な風に思われる。できるだけ何気なく戻らなくては。
郁は振り返り、元来た廊下を引き返そうとした、そのとき――

 

「あんなことされて笑ってんじゃねえよ」

 

はっと顔を上げると、大賀が立っていた。首にかけられたヘッドホンからはシャカシャカと音楽が漏れている。あのときと同じ、鋭く非難するような瞳。彼は樋口や他の少年たちだけじゃなく、郁もまた非難していたのだ。お前が悪いんだ、とでも言わんばかりに。
郁は居た堪れなくなって、廊下を駆け出していた。

 

 

昨日はそのまま下校してしまった。
樋口に、そして大賀に会うのが気が重い。

 

「お、おはよう」

 

気まずいけれど、席が近い樋口に挨拶をする。樋口の席には何人か友人が集まっていた。

 

「話しかけんなよ。お前、昨日約束破っただろ」
「え……」
「授業ふけて帰っただろが。だから罰ゲーム。今日一日オレらお前と口きかねーから」
「そ、そんな……」
「オレらといたありがたみ、とくと実感しろよ」

 

郁は今日一日ハブにされてしまった。
休み時間になっても、どこにも居場所はなかった。
みんなは休み時間を待ちわびているのに、郁は、そんな時間一生来なくていいと思っていた。
ポツンと一人机に座って、ふと大賀の方を見た。大賀は音楽を聴きながら誰かから借りたマンガを黙々と読んでいる。
郁は、そんな大賀にも話しかける勇気がなかった。ただ一人、この孤独な時間が早く過ぎ去ることを祈っていた。

 

 

放課後、郁は腕を引っ張られていた。
たどり着いた先は教室ではなく、使われてない空き教室だった。

 

樋口が近づき、脅えるうさぎのように震えている郁のベルトに手をかける。
後ずさりして黒板にぶつかると、樋口は郁の体を壁に押し付けた。
そのまま抱きしめられて、ズボンの中に手が滑り込む。

 

「やめっ、樋口くん!」
「いつもエロい目しやがって。お前が悪いんだよ。誘ってんだろ」
「なに言っ……」

 

押し倒され、ズボンとパンツを脱がされたあとは、周りの少年達にも見えるように股を持ち上げられる。
まだ使われたことのない薄桃色の性器と秘部は、少年達の欲望を追い立てるのに充分な艶めきを放っていた。
樋口は、片手で股をつかんだまま、もう片方の手で郁のシャツをたくし上げた。性器と同じ、桃色に色づいた乳首は乱暴な手つきで引っ張られる。
痛みを感じたと思ったら次には震えがくるほど気持ちが良くなり、郁は懇願の悲鳴の合間に濡れた吐息を漏らした。乳首は先ほどよりも紅に染まり、つんと尖っている。必死に抗うも、唇からはどうしても漏れてしまう艶めいた嬌声に、どうしていいのかわからなかった。
郁の声に触発されたのか、いつの間にか周りの少年達も集まってきて、郁の体を押さえ込んでいる。

 

「オレが教えてやるよ、セックス講座。童貞のやつは必見だぞー」

 

そう言って樋口が郁の上で笑う。他の少年達も楽しそうに笑う。郁の手首は、他の少年達によって床に貼り付けられて動かない。

 

「ひどい、樋口くん……」
「ひどくねーよ。お前だって感じてんじゃん。お前ホモだろ? ならいいじゃん」
「ホモじゃない!」
「こんな女みてーなツラして、嘘つけ。ずっとこうやってヤられたかったんだろ? まあ、お前はラッキーだよ。オレ、エッチ上手いからさ」
「やだ、こんなのやだ!」
「あんま叫ぶと口塞ぐぞ。誰か、ガムテ持って来い」

 

嫌がる郁の口にガムテープがべっとりと貼られた。
樋口はVの字に限界まで広げられた郁の股をみんなに見せた。

 

「女の穴とは位置が違うからなー。今回はここに入れるぞ」
「平気なのかよ」
「へいきへいき、誰かクリームみたいなの持ってねえ?」
「リップクリームは?」
「お前そんなん持ってんの? お前こそホモかよ」
「ははは」

 

そんな冗談を交えながらこれから行われる恐ろしい出来事に、郁の心は縮み上がっていた。彼らの非情さに涙が零れる。
樋口がリップクリームを秘部に塗りたくる。ひんやりした刺激の直後、郁の内部を押し広げながら指が進入してきた。抜き差しを繰り返す圧迫感。それが指二本になると、呼吸を止めてそれに耐える。

 

「リラックスしないと痛いよー」

 

郁には首を振ることしかできなかった。
しかし、尖った乳首を甘噛みされて、呼吸が荒くなる。抜き差しをされながら、体に舌が伸びる。白い肌に紅く痕が残るたび、郁は身を捩じらせて啼いた。樋口が舌を這わせるのは、どこもかしこも敏感なところだった。
その卑猥な光景に、少年達は息を潜めて見守っていたが、そのうちの一人が郁の性器に手を伸ばした。先走りを確認すると、それを広げるように亀頭に爪を立て、弾き、ぬるぬると撫で回す。
それは頭が痺れるほど気持ちが良かった。同時に、秘部も痙攣を起こして、強く締め付ける。
郁は壊れた玩具のように、ビクとも動けなかった。動かせるものといえば瞳だけだ。性器はみるみるうちに立ち上がり、蜜のようにとろとろと流れ落ちる先走りは艶めかしい光を放っている。
やがて郁の胸と腹は、自らの先走りでてらてらと光った。

 

「やべっ……やらしすぎ」

 

一人が自分のモノをしごきだした。それを樋口が制止する。

 

「おいおい、やめろよ。こんなとこで」

 

指は3本にまで増えていた。圧迫感はすごい。たまに前立腺を押されるたび、性器が跳ね上がる。
しかし、その樋口の言葉を聞いて、本当はこんなところでセックスなんてするはずがないと、郁は少し安心した。

 

「オレがぶちこんだあと、お前にもヤらせてやるからさ。出すなら中に出せ」

 

その言葉に、郁は何を聞いたのか分からず樋口を見つめた。樋口は構わず自分のベルトを外し、大きなそれを郁の前に披露した。郁は涙を流しながら身をくねらせて逃げようとする。しかし、3人がかりで押さえ込まれてはどうすることもできなかった。

「しっかり咥えろよ。くっ」

股は、結合部が見えるくらいまで広げられている。小さな桃色の秘部が赤黒い性器を飲み込んでゆく。ミリミリと裂けそうなほどだ。
律動を開始すると、郁は射精した。樋口の腹にもそれはついた。「淫乱」と郁に囁き、また動き出すと郁は泣きながら射精した。コントロールできない苦しみと快感の狭間で、郁は混乱していた。

「お前、こうしてヤられんの大好きみてえだな、もっとヨガってみろよ。泣くほど気持ちいいのか?」

 

ガムテープで止められた口は、くぐもったうめき声しか出せない。
短い間隔でしか呼吸ができない。
押し寄せてくる快感に、郁は必死で抗う。

 

助けて

助けて

助けて

 

郁はその最中、ずっと助けを求めていた。

 

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